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故に世の中おもしろい(ゆで卵に缶チューハイ)

ゆで卵に缶チューハイ

 
趣味というほどでもないが、駅構内の通称「エキナカ」で飲むのが好きだ。究極はJR東京駅の東海道本線ホーム。手には売店で買った缶チューハイ。つまみは味付けゆで卵である。

500円玉枚で十分おつりがくるが、これが絶妙の組み合わせなのである。卵の白身はのどごしが良く、半熟に近い黄身はうまみが濃縮されている。「殻のむき方説明書」と一緒にペーパーナプキンもついている。たまごの殻をくるっと包んでゴミ箱へ捨てる。

ゆで卵の製造先は岩手の工場。1980年に盛岡駅に卸し、仙台駅、上野駅と販売網を広げたそうだ。製造法は長年の勘と経験に裏付けられた職人技なのだろう。それにしても、ゆで卵というのはつるんとした姿が湯上がりのようで何とも色っぽい。

文豪ゲーテの言葉を思い出した。酒の飲み方としてこれほど見事に表現した言葉は少ないだろう。

「わたしが独りで座っているとき、これ以上にいい場所があろうか。わたしの酒をわたしは独りで飲む。そのときわたしをさえぎる者はない。わたしはわたしの考えたいことを考えているのだ」(「西東詩集」)

他人から注がれるのではなく、ましてや会社の忘年会や送別会ではなく、独り酔って、自分の世界を融通無碍(むげ)に愉(たの)しむことこそ、究極の酒飲みかもしれない。

わたしの酒をわたしは独りで飲む――。ガタンゴトンと動く列車の音や、乗り降りの案内を告げるアナウンスに耳を傾けるのも風流かもしれない。もちろん酔いすぎはご用心。くれぐもほろ酔いで。

朝日新聞編集委員 小泉 信一




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